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電子書籍に未来はあるのか

電子書籍は購入したのではなく、許可された条件内で読む権利を得ただけ。という記事がWIREDに載っていました。

紙の本を買うと、それ自体が自分の物になるので、売り払っても良いし、友人に貸したりしても良い。自分の物ですから、(言論統制とか焚書とかなければ)ずっと持っていられます。

しかし、電子書籍となると物理媒体を含まない中身だけに対してお金を払う訳で、デジタルデータですから勝手なコピーなどを防ぐためにDRMがかかっていて、その取り扱いには制限があります。

そこから冒頭のような話になるわけです。ライセンス違反があった場合や偽りの契約を結んだ場合に取り消されるのは、仕方ないでしょう。強制消去まで出来る仕組みだとは私も知りませんでしたが、まあ文句を言う筋合いでもないような気がします。

正当な権利を持った人が読み続けられることを保証するならば、ですが。

永遠の物などどこにもないとは言え、紙の書籍はちゃんと保管すれば数十年程度は普通に保ちますが、電子書籍はどうでしょうね?

今のDRMでは、もしその電子書籍ストアが廃業したら、そして紐付けられた端末が故障したならば、それを読む方法は失われることになります。

電子書籍の会社がどれほど保つか怪しいですし、今後永遠に増え続ける(理論的には)ユーザー情報をきちんと管理して提供し続ける覚悟があるのでしょうか?どこか適当なところでさよなら〜とかするつもりでしょうか。

いつか限界が来るのはわかりきっているのに、それについての方針などについて明確に示されているのを見聞きしたことはありません。たぶん、利用規約か約款か、ほとんどの人が読まずに承認ボタンを押すようなところに、自分たちの都合の良いことが書かれているんでしょう。

今までの紙の本を買うときと異なる条件があるにもかかわらず、わかりやすく示さないというのは、書店と自らを称しているなら良心的な態度とはいえませんよね。心情的にはそれだけでも大きなマイナスです。

同じ内容で、媒体も込みで、よりよい品質(大抵は印刷物の方がよいですよね)で手に入り、法的に許される利用範囲で自由に利用でき、譲渡したりするのも自由で、自分の責任で実質永久に保存もできる物が同じ価格で手に入るとき、どちらを選ぶのでしょうか。

物理的な媒体と一体であることそのものが大きなマイナスになる条件(置き場や運搬の問題があるときかな)でなければ、どう考えたって紙の本を買うと思います。少なくとも私は。

この問題は、価格が納得のいく物であればいきなり解決する話です。どっちが良いか価値に対する支払いのバランスは個人ごとに重視するポイントが違う以上、それぞれの判断でしょうしどちらも残っていくことでしょう。

DRMの互換性とかを推し進めて、一度購入した権利はどの環境でも行使できるようにして、場合によっては譲渡も可能にするなどして、出来るだけ紙の本に近いところまで価値を高める方法もありますが、売った後のコストが発生し続けますし(これは現状でも同じなんですけどね)、それぞれの企業の思惑が絡んでとても解決しそうにありません。現実的じゃないですね。

それならそれで、貸本なんだと割り切ればよいだろうと思うのですが。貸本は買うより安い。当たり前。だから制限もある。まあそうだね。ってことで良いのに。

電子ガジェット好きなので必要もなく端末を買い、その上での読書を楽しみたいと前向きに思っている私でも今の電子書籍購入には消極的にならざるを得ませんからねぇ。

今年は大きな動きがいくつもあり、何度目か知りませんが、関係の人たちは今度こそ電子書籍元年だと思っているのかもしれません。しかし、このままでは結局、そんなのもあったよねぇで終わりになるのじゃないかと。

海外(というかアメリカですよね)で成功したのは、やはり価格です。こんなに違う性質をもつ物同士(紙の本と電子書籍データ)を、たとえ中身が同じでも、同じ値段にするなんて、どう考えてもおかしなことです。

既得権益とか、大人の事情があるのでしょうけど、結局紙の本と変わらないというのでは、とっかかりの時点で負けでしょう。電子書籍推進の人たちは。

消費者にとっては選択肢が増えるのは良いことですので、うまくいって欲しいとは思っているのです。そのためにも、一時的な権利を売るならそれに見合った価格でということをちゃんと考えて欲しい物です。